「フリーランスになったけれど開業届を出すメリットってあるの?」
このように考えている人も多いのではないでしょうか。
実際のところ、開業届を出さなくてもフリーランスとして仕事をすることはできます。
ですが、開業届を出すのと出さないのとでは大きな差が生まれることをご存じでしょうか。
今回は「フリーランスが開業届を出すメリットとデメリット。そして、開業届の記入方法と注意点」を紹介していきます。
フリーランスとして活動していくのであれば、開業届に対する知識をしっかりと身に付けましょう!
目次
フリーランスが開業届を出す4つのメリット
フリーランスになっても開業届を出す義務はありません。
なぜなら確定申告をすることで事業を行っているかどうかを判断できるからです。
それでも多くのフリーランスが開業届を出すのは一体なぜでしょうか。
それは以下の4つのメリットがあるからなのです。
その1:青色申告ができて節税になる
多くのフリーランスが開業届を出すもっとも大きな理由は、青色申告ができるようになるからです。
フリーランスは確定申告の時に、白色申告か青色申告を選ぶことになります。
「それならば白色申告で良いのではないか」と思ってしまいますよね。
ですが、それは大きな間違いだと言えます。
白色申告とは違い、青色申告は多くの節税効果が期待できるのです。
最大65万円の控除を受けられる
青色申告には「簡易簿記」と「複式簿記」という2種類の方法があります。
簡易簿記とは、家計簿のようにシンプルな帳簿に収支を記載する方法です。
簡易簿記で申告すると、10万円の控除を受けることができます。
一方、数種類の項目別に収支を記載するのが複式簿記です。
簡易簿記に比べると、複雑で手間が増えてしまいますが、こちらは最大で65万円の控除を受けることができるようになります。
会計ソフトを使えば手間を減らせるので、是非利用すると良いでしょう。
損益を翌年に繰り越せる
青色申告をすると、最大で3年間は損益を繰り越して計算できるようになります。
たとえば、「1年目は100万円の赤字で、2年目は500万円の黒字だった」としましょう。
この場合、1年目は収益がないので税金は発生しません。
次に2年目を見てみましょう。
青色申告の場合、2年目には1年目に出た100万円の赤字を繰り越すことができます。
つまり、実際には500万円ではなく400万円の収益があったものとして計算するのです。
一方、白色申告の場合はその年の収支しか計算対象になりません。
そのため2年目には、500万円分の黒字があったものとして計算することになるのです。
家族の給料を経費にできる
白色申告では、家族に支払った給料を経費にすることはできません。
ですが青色申告であれば、家族や配偶者を青色事業専従者として届け出ることで、給料を経費に計上できるようになるのです。
青色事業専従者の条件は以下の通りです。
- 生計を共にする配偶者や家族
- 半年以上、事業に従事すること
- 満15歳以上であること
- 仕事に対して適正な給料であること
- 「青色事業専従者給与に関する届け出」を提出済みであること
家族に支払う分の給料は、常識の範囲内の給料を申請するようにしましょう。
節税をしようと高額に設定すると申請が通らないので注意が必要です。
その2:屋号を名乗ることで社会的な信用度が上がる
フリーランスとして仕事をするだけであれば、屋号を名乗る必要はありません。
ですが、屋号を持つことは社会的な信頼を得やすいというメリットがあります。
税務署や銀行などに提出する書類も、本名よりは屋号の方が「信頼性がある」と思われるケースが多いです。
また、主に法人と取引をしている企業の場合、個人との契約を避けることがあります。
そのような企業と契約を目指すのであれば、せめて屋号を持っておくと良いでしょう。
その他、銀行の口座を屋号で作ることもできるので、仕事に関するお金を1つの通帳で管理することが可能です。
その3:無料の記帳指導の案内が届くようになる
フリーランスになりたての頃は、確定申告など帳簿の付け方が分からなくて苦労しますよね。
ネットや本で調べただけでは知識も曖昧で、多くのフリーランスがつまづくところです。
開業届を提出すると、税務署から記帳指導の案内が届くようになります。
これは開業した年度に限り、年に4回までプロの税理士から指導を受けられるというものです。
自宅や事務所に直接足を運んで丁寧に指導してくれるので、積極的に活用すると良いでしょう。
その4:フリーランスとしての自覚が出る
多くのフリーランスは自宅を仕事場にするため、プライベートと仕事の境界があいまいになりがちです。
そのため気を抜けばサボってしまうという人も多いのではないでしょうか。
開業届は「自分はプロだ」という決意を表明するものです。
あくまでも副産物的なメリットになりますが、開業届を出すことで「事業を始めた」という意識を強く持つことができるようになるのです。
フリーランスが開業届を出す3つのデメリット
どのようなものにもメリットの裏にはデメリットが存在するものです。
知らないままでは思いもしない損をしてしまうこともあるので、開業届を出す前にしっかりとチェックしましょう。
その1:確定申告をしないと税務署から連絡が来る可能性がある
一度開業届を出すと「事業を行っている」と税務署に判断されます。
フリーランスは、所得が年間38万円以下であれば確定申告をする義務はありません。
ですが、開業届を出したという情報は国税庁に登録されています。
そのため、確定申告をしないままでいると脱税の疑いをかけられ、税務署から連絡がくる可能性が高くなるのです。
その2:失業保険の対象から外れる
失業給付をもらってから、フリーランスとして仕事をしようと考えているのであれば、開業届を出すタイミングには注意しましょう。
厚生労働省の定める失業給付の受給資格は以下の通りです。
「現在失業しており、かつ、すぐにでも働く意思があること」
開業届を出すということは、働く意思があることを意味します。
たとえ実際に仕事をするのが失業給付をもらい終わってからだとしても、開業届を出した時点で受給資格がなくなってしまうのです。
「どうせバレないだろう」と思って、開業届を提出済みなことを隠して失業給付の申請をするのは控えましょう。
不正受給となってしまい、最悪の場合は詐欺罪の適用もありえるのです。
その3:健康保険の扶養から外れる場合がある
フリーランスとして、配偶者の扶養内で働こうと思っている人は注意が必要です。
健康保険の扶養は、配偶者が加入している健康保険の組合によって基準が違います。
フリーランスでも「年間の所得が130万円までなら扶養に入れる」というところもあれば、所得がほとんどなくても、個人事業主というだけで扶養から外されてしまうところもあるのです。
配偶者の扶養内で働こうと思っているのであれば、開業届出す前に加入している健康保険組合の基準をしっかりとチェックしましょう。
開業届の記入方法と注意点
開業届の書類を手に入れるには、以下の2つの方法があります。
- 各自治体の税務署に取りに行く。
- 国税庁のホームページからダウンロードする。
この書類に以下の情報を記入し、税務署に提出しましょう。
- 宛名
- 提出日
- 納税地
- 氏名と捺印
- 生年月日
- マイナンバー
- 職業
- 屋号
- 届け出の区分
- 所得の種類
- 開業日
- 開業・廃業に伴う届出書の有無
- 事業の概要
職業は慎重に選ぶ
職業欄は総務省が定めている日本標準職業分類を参考にして選びます。
職業の分類には厳格な基準はありません。
近年ではインターネットの発達とともに様々職業が生まれています。
たとえばYoutuberなどは、広告業と書くこともできるし、そのままYoutuberと書くこともできるのです。
ですが、事業所得が290万円を越える場合は注意しましょう。
個人事業税の基礎控除は290万円までとなっており、それ以上の所得がある場合は事業税が発生します。
事業税は職業の種類によって税率が変わってくるので注意しましょう。
たとえばデザイン業は5%の事業税がかかります。
一方で芸術家は非課税です。
どちらかといえば芸術的な活動をしているのにもかかわらず、深く考えずにデザイン業を選んでしまうと事業税が発生してしまいます。
損をしてしまわないよう職業の種類は慎重に選びましょう。
事業概要は融通がきくようにしておく
フリーランスで仕事をしていると、収入源が複数あることが多いです。
基本的に「事業の概要」にはメインの収入となっているものを書けば問題ありません。
ですが、活動をしていくうちに新しいジャンルの仕事を始めることもありますよね。
そのような場合は、末尾に「および、それに付随する業務」と付け加えましょう。
そうすることで事業が拡大する場合でも、書き直す必要が無くなります。
また、どの収入源も同じくらいの収入があって、どれがメインの収入か判断が難しい場合もありますよね。
そのようなときは、すべての職業を書いておくとよいでしょう。
一緒に提出すべき書類を忘れないようにする
開業届を出す最大のメリットは、青色申告をすることで最大65万円の控除を受けられるようになることです。
青色申告をする場合は、忘れずに青色申告承認申告書の提出をしましょう。
他にも、従業員を雇う場合などは以下の書類を提出しておく必要があるので、しっかり確認しましょう。
- 青色事業専従者給与に関する届出書
- 給与支払事務所の開設届出
- 源泉所得税に納期の特例の承認に関する申請書
控えは必ず取っておく
開業届を提出する際には、控えをとっておくことを忘れないようにしましょう。
控えをとっておかないと、銀行の口座を開設するとき等、再度取り寄せなくてはなりません。
開業届の控えは、原本をコピーしたものを併せて提出すれば、そのコピーにも受領印を押して返却してもらえます。
開業届を出してフリーランスとしてスタートを切ろう!
開業届の提出は義務ではありません。
確定申告さえ忘れずにしていれば、開業届を出さなくても仕事をすることはできるのです。
ですが、開業届を出せばフリーランスにとってメリットがたくさんあります。
フリーランスとして活動を始めたのであれば、面倒だと言わずに開業届を出すようにしましょう。
もし迷っているのであれば、まずは税務署に相談に行くことをおすすめします。
確定申告の繁忙期でなければ混んでいることもないので、丁寧に教えてもらえるでしょう。