「フリーランスになると社会保障制度はどのように変わるのだろうか」
「会社員辞めてもきちんと年金もらえるか心配」
このような不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
フリーランスになると会社員のときに比べて、社会保障制度による保障が手薄になる部分があります。
会社を退職する前に、フリーランスになると社会保障制度がどのように変わるのか把握すべきでしょう。
そこで今回は、フリーランスになると年金制度がどうなるのか解説していきます。
目次
フリーランスが加入する年金は国民年金
自営業やフリーランスの方は、国民年金に加入します。
国民年金とは、各地方自治体が運営している年金制度で、お住いの住所を管轄している市町村役場の国民年金担当課で、加入の手続きをしなければなりません。
国民年金に加入していると、以下のような年金を受け取れます。
- 老齢年金:65歳以上になると受け取れる年金
- 遺族年金:亡くなった場合に残された家族に支払われる年金
- 障害年金:病気やケガで所定の障害状態になった場合に受け取る年金
また、老齢年金を受け取るためには、最低でも10年間は国民年金に加入し保険料を支払わなければなりません。
国民年金に加入する被保険者は、以下の3種類に分かれます。
- 第1号被保険者:自営業やフリーランス、学生など
- 第2号被保険者:厚生年金に加入している会社員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者の配偶者で20歳以上65歳未満の人
以上の点をまずご理解いただき、会社員が加入する年金との違いに注目してみてください。
自営業は国民年金に会社員は厚生年金に加入している
自営業やフリーランスが加入しているのは国民年金ですが、会社員は厚生年金に加入します。
会社員の方は厚生年金に単独で加入するわけではなく、国民年金にも同時に加入している仕組みです。
フリーランスが自分で会社を設立した場合は厚生年金
フリーランスの場合も、自分で会社を設立した場合は、自分や従業員も厚生年金に加入可能です。
法人化することで、厚生年金に加入できる以外にも、法人税の仕組みを使って節税ができるなどさまざまなメリットがあります。
国民年金と厚生年金の違い
国民年金と厚生年金には大きな違いが2つあります。
- 支払う保険料
- 受給できる年金の額
それぞれの違いについて、確認してみましょう。
支払う保険料
国民年金と厚生年金では、支払う保険料が大きく異なります。
以下の表をご覧ください。
国民年金 | 厚生年金 | |
保険料 | 16,490円(平成31年4月時点) | 給与の額(標準報酬)で変わる |
扶養 | なし | あり |
このように、国民年金の保険料は一律なのに対して、厚生年金は給与の額で保険料が変動します。
また、国民年金には厚生年金のような扶養の考えがありません。
厚生年金の加入者に、一定の収入以下で20歳以上65歳未満の配偶者がいた場合、保険料は免除される仕組みです。
ちなみにこのとき配偶者は、国民年金に加入していることになります。
一方で、国民年金加入者に、一定の収入以下で20歳以上65歳未満の配偶者がいた場合は、その方の分の保険料も支払いが必要です。
受給できる年金の額
もっとも大きな違いは、受給できる年金の額です。
基本的には、厚生年金の方が受給できる年金の金額が大きくなります。
以下の表をご覧ください。
国民年金 | 厚生年金 | |
老齢年金 | 老齢基礎年金 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金 |
遺族年金 | 遺族基礎年金 | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
障害年金 | 障害基礎年金 | 障害基礎年金+障害厚生年金 |
厚生年金は、基礎年金に加えて厚生年金も受給できます。
フリーランスになると、老後の年金だけでなく、遺族年金や障害年金の額が下がるため注意しましょう。
ちなみに、老齢年金の平均受給額は、国民年金が約5.5万円、厚生年金は14.7万円というデータがあります。
※平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況より
フリーランスが国民年金の受給額を増やす方法
フリーランスは会社員と比較すると受給できる年金の額が低くなることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
しかし、諦める必要はありません。
フリーランスは、自分の努力次第で年金の額を増やす方法や、老後の資金を準備する方法が数多く用意されています。
ここでは、フリーランスが自分でできる老後の資金対策について、以下の4つの制度についてお話していきます。
- 付加年金
- 国民年金基金
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 小規模企業共済
また、これらの掛け金は全額所得控除になるため、所得税や住民税の額を少なくする節税効果があります。
付加年金
付加年金とは、国民年金の保険料に200円を上乗せすると、受給できる年金の額が上昇します。
上昇する年金額は「200円×付加保険料納付月数」です。
たとえば、付加保険の保険料を30年間支払った場合、付加保険料納付月数は360月。
よって上昇する年金額は、200円×360月=72,000円です。
このとき、付加保険料の支払い総額は、144,000円(400円×360月)。
つまり、2年間の年金受給で元が取れます。
国民年金基金
国民年金基金は、厚生年金と国民年金の受給額の差をなくすために用意されている公的な年金制度です。
月額の掛け金は以下の4つで決まり、上限は最大で68,000円となります。
- 給付の型
- 加入口数
- 加入時の年齢、性別
ただし、後述する個人型確定拠出年金(iDeCo)掛け金の額と合算して68,000円以内となります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、自分で老後の年金を積み立てるための制度です。
最大の特徴は、自分で支払った掛け金の運用先を、自分で指定する点にあります。
投資先は、投資信託だけでなく保険や定額貯金も選択可能です。
フリーランスの場合、掛け金の拠出額は68,000円が限度となります。
ただし、拠出できる金額は、国民年金基金の掛け金と合算して68,000円以内である必要があるため注意しましょう。
小規模企業共済
小規模企業共済は、退職金がないフリーランスや自営業の人のために、自分で退職金を積み立てていく制度です。
全国で300万人を超える人が加入しています。
掛け金は、1,000円〜70,000円の間で、500円単位で設定可能です。
積み立てたお金は、一括と分割もしくはその両方で受け取ることができます。
フリーランスが年金保険料の支払いを免除してもらう方法
フリーランスになると、きちんと収入が得られるか不安に思われている方も多いでしょう。
「国民年金の保険料をきちんと払っていけるのだろうか」
と不安を抱えている方のために、ここでは国民年金の免除や猶予などの制度の仕組みや申請方法についてお伝えしていきます。
年金保険料が払えないときは必ず「免除」の申請をしよう
国民年金の保険料を支払えない可能性がある場合は、必ず免除の申請をしましょう。
もし、国民年金の保険料を支払わずに滞納した場合、以下のような不利益が発生する可能性があります。
- 資産が差し押さえられる
- 年金が受け取れなくなる
このため、国民年金の保険料の支払いが難しいようであれば、はやめにお住いの自治体の役場に相談しましょう。
年金保険料の免除・猶予とは
保険料の免除制度とは、失業中の方など所得が少ない方のために、保険料の納付を免除もしくは減額してくれる制度です。
免除される額は、その人の前年の所得が一定以下の場合、全額、3/4、半額、1/4のいずれかが免除されます。
また、免除された額によって将来受給できる老齢基礎年金の額も変わる点に注意しましょう。
たとえば、全額免除された場合、免除された期間分の老齢年金の額は、全額納付した場合の半分になります。
一方で猶予制度は、前年度の所得が一定以下であった場合、保険料の支払いが猶予される仕組みです。
納付が猶予されている期間中は、保険料を納めなくて良い代わりに、年金の受給額も増えませんが年金の加入期間にはカウントされます。
年金保険料の免除や猶予の申請方法
国民年金保険の免除や猶予を申請する方法は、住民票のある市町村役場の担当窓口に出向き、申請書を提出するだけです。
申請の際は、年金手帳もしくは年金基礎番号通知書を持参しましょう。
また、前年もしくは前々年の所得を証明する書類や雇用保険受給資格者証または離職票の写しが必要な場合もあります。
収入が増えたら「追納」しよう
もし、事業が軌道に乗り、国民年金の保険料が支払えるようになったら、追納の手続きをしましょう。
追納とは、免除もしくは猶予されていた保険料を、後から納めることで、減額されていた将来の老齢年金の額を元に戻せます。
ただし、免除や猶予を受けていたときから一定年数が経過していると、保険料に加算額が加わるため注意しましょう。
年金以外のフリーランスと会社員の違い
ここまで、フリーランスになった場合に会社員の場合と、年金制度にどのような違いがあるのかを解説してきました。
しかし、フリーランスと会社員の違いは年金以外にもいくつかあります。
健康保険の種類
会社員は、勤務先の健康保険組合の健康保険に加入しますが、フリーランスの場合は国民健康保険に加入することになります。
勤務先の健康保険と国民健康保険は、給付内容にいくつか違いがあるので確認しましょう。
代表的なものは、病気や怪我で働けなくなった場合に受給できる「傷病手当金」の存在です。
傷病手当金は、会社員が加入する健康保険にはありますが、国民健康保険にはありません。
また、入院や手術を受けた場合の医療費の自己負担額の上限や、出産にかかわる手当の額なども異なる場合があります。
労災保険の有無
フリーランスは会社員と異なり、労災保険に加入していません。
事業を営んでいる最中に、事故に遭った場合も労災保険が適用されないため、注意しましょう。
所得税や住民税の支払い方法
会社員の場合は、ほとんどの方が毎月の給与から所得税や住民税が天引きされています。
そして、勤務先が代わりに納税してくれる仕組みです。
一方でフリーランスは、所得税も住民税も自分で納める必要があるだけでなく、所得税の額は自分で計算して確定申告をしなければなりません。
まとめ
フリーランスになると会社員のときよりも受給できる年金の額が低下します。
しかし、付加年金や国民年金基金、個人型確定拠出年金など自助努力で補える制度がある点で安心できますね。
そして、国民年金の保険料が払えない可能性がある場合は、滞納せず免除や猶予が受けられないか、お住いの市町村役場の担当窓口に相談しましょう。