フリーランスになると様々な税金を自分で納付しなければなりません。
仕事が忙しい中、確定申告を終えて所得税を納めたあと、忘れたころにやってくるのが「住民税」の納税通知書です。
そして、住民税の仕組みや計算方法を知らないと、納税額を見てあまりの高額さに驚いてしまうことになるかもしれません。
- 「住民税の計算方法が良くわからない」
- 「どうやって住民税を払うのかわからない」
このように感じているフリーランス、もしくはフリーランス志望の方のために今回は、住民税の仕組みや特徴、計算方法、注意点について解説しています。
ぜひ、ご一読ください。
目次
フリーランスになる前に住民税の仕組みを理解しよう!
住民税とは、正確にいうと「市町村民税・特別区民税」と「都道府県民税」の総称です。
会社員や公務員として勤められている方のうち、ほとんどの方は住民税の計算方法や仕組みをご存知ありません。
なぜなら、給与から自動的に天引きされている場合がほとんどだからです。
まずは、 住民税の基礎知識について確認していきましょう。
普通徴収と特別徴収に分かれている
住民税を納税する方法は、普通徴収と特別徴収の2種類に分かれています。
それぞれの徴収方法について確認していきましょう。
普通徴収は自分で納付する方法
普通徴収とは、住民税を自分で納める方法です。
毎年6月に自宅に届いた納税通知書を、金融機関やコンビニに持参して納税します。
このとき納税するのは、前年1月1日〜12月31日までの所得に対して課せられた住民税。
支払い方法は、1年分を一括で支払う他に、年4回に分けて支払う方法もあります。
基本的に支払い方法は現金のみ。
しかし、自治体によってはクレジットカードやLINE Payを利用できるところもあります。
どのような支払い方法が可能か確認してみると良いでしょう。
特別徴収は勤務先の給与から天引きしてもらう
特別徴収とは、住民税を12分割し勤務先の給与天引きにて納める方法です。
ほとんどの会社員や公務員は、特別徴収で住民税を支払っています。
給与天引きは、毎年6月から開始され翌年の5月まで続きます。
このとき天引きされているのは、前年分の住民税です。
会社員からフリーランスになると、給与収入がなくなるため特別徴収は利用できません。
所得割と均等割に分かれている
住民税は、所得割と均等割に分かれています。
それぞれの仕組みについて、確認していきましょう。
所得割の計算方法は所得税とほぼ同じ
住民税の所得割は、所得税と同じように1月1日から12月31日までの年間収入(売上)に対して課税されます。
具体的には、年間収入から必要経費・所得控除額を差し引いた「課税所得」に対して一定の税率がかけられて計算される仕組み。
具体的な計算方法は以下の通りです。
「課税所得=年収(売上)− 必要経費 − 所得控除」
「所得割=課税所得×税率」
そして、適用される税率の内訳は以下の通りです。
市町村民税・特別区民税 | 都道府県民税 | 合計 |
6% | 4% | 10% |
そして、住民税の所得割と所得税の計算では以下の点が異なります。
- 税率は所得の金額にかかわらず一定
- 所得控除の金額が異なる
特に、一定の条件を満たした場合に差し引くことができる「所得控除」の金額が異なる点は注意しなければなりません。
所得税 | 住民税 | |
基礎控除 | 38万円 | 33万円 |
配偶者控除 | 最大38万円 | 最大33万円 |
※基礎控除:全員に適用される所得控除
※配偶者控除:一定の収入以下の配偶者がいる場合に適用される所得控除
所得控除が違うことによって、課税の対象となる課税所得の金額が異なる点に注意しましょう。
均等割は一定額
均等割の金額は、基本的に以下の金額となります。
市町村民税・特別区民税 | 都道府県民税 | 合計 |
3,500円 | 1,500円 | 5,000円 |
均等割の金額は、所得割と違って所得の金額に応じて上下することはありません。
所得割の税率と均等割の額が異なる自治体も存在する
所得割の税率と均等割の金額は、自治体によって異なる場合があります。
例えば、京都市に住んでいる人の場合は、以下の通りです。
市民税 | 府民税 | 合計 | |
所得割 | 8% | 2% | 10% |
均等割 | 3,500円 | 2,100円 | 5,600円 |
このように、税率や金額が異なりますが、自治体によって住民税の金額自体に大きな差はありません。
住民税を算出する方法
住民税は、所得割と均等割をそれぞれを計算し、税額控除を差し引くと算出できます。
計算式は、以下の通りです。
「住民税=所得割+均等割−税額控除」
代表的な税額控除は、住宅ローンを組んでいる場合に利用できる「住宅ローン控除」や、ふるさと納税をした際に利用できる「寄附金控除」などが挙げられます。
これらは、所得税においても利用できる税額控除ですね。
また、住民税には独自の税額控除として「調整控除」があります。
調整控除とは、所得税と住民税において「基礎控除」や「配偶者控除」などの所得控除の額が異なる点を調整するための税額控除。
計算式は複雑なためここには記載しませんが、多くの方が最低控除額の2,500円が差し引かれる仕組みです。
フリーランスになった場合の住民税をシミュレーションしてみよう
ここでは、実際に住民税の金額を計算していきます。
試算に利用するモデルケースは、以下の通りです。
- 収入(売上):600万円
- 経費:200万円
- 所得控除:130万円
- 税額控除:2,500円(調整控除のみ)
まず、課税所得を計算しましょう。
- 課税所得=年収(売上)− 必要経費 − 所得控除
=600万円−200万円−130万円
=270万円
よって所得割の金額は、以下の通りです。
- 所得割額=270万円×10%
=27万円
ここに均等割の5,000円を合計し、税額控除を引いて最終的な住民税の額が求められます。
- 住民税額=27万円+5,000円−2,500円
=27万2,500円
以上で住民税の金額が計算できました。
会社員からフリーランスになるときの住民税の注意点
会社員からフリーランスになるときは、住民税の納税方法が変わるだけでなく、退職するタイミングによっては住民税を清算しなければなりません。
ここでは、会社員からフリーランスになるときの住民税に関する注意点についてまとめました。
納税方法が異なる
会社員とフリーランスでは住民税の納税方法が大きく異なります。
基本的に会社員は特別徴収ですが、フリーランスは自分で納付する普通徴収で納めなければなりません。
そのため、住民税の金額が12等分されて毎月の給与から天引きされる方法から、一括もしくは4回の分割で納税する方法に変わります。
先ほど試算した通り、住民税の金額は高額になる可能性もあるので、納税するためのまとまった資金を確保しておく必要があります。
また、住民税の支払いが遅れると延滞税が取られる可能性があるため注意しましょう。
退職時には残りの住民税を清算しなければならない
フリーランスになるために会社を退職した場合、まだ支払っていない期間の住民税を清算する必要があります。
特別徴収の場合、6月〜翌年5月の給料まで天引きが続きます。
天引きされている期間の途中で退職した場合は、残余期間の住民税を清算しなければなりません。
例えば、12月で退職をした場合、翌年1月から5月分までの住民税が給与天引きできなくなるため、清算が必要です。
清算する方法は、以下の2種類があります。
- 退職月の給与からまとめて天引きし清算する
- 残りの期間分だけ普通徴収にて自分で収める
退職する時期によっては、まとまった金額の住民税を支払う必要があるため、貯金が大きく削られる可能性があります。
そのため、フリーランスになろうと考えている場合は、ある程度の貯金を準備しておくと安心ですね。
住民税の負担を減らす方法
最後に、住民税の負担を減らす方法を簡単に解説していきます。
住民税も所得税と同様に、課税所得の金額を減らすことによって節税が可能。
方法は、主に以下の2つです。
- 経費を有効活用する
- 控除を利用する
それぞれについて、詳しく解説していきましょう。
経費を有効活用する
経費とは、売り上げを得るために必要であった諸費用のことをいいます。
何でもかんでも経費と認められるわけではなく、事業の売り上げに貢献していなければなりません。
例えば食費の場合、クライアントとの打ち合わせでの食費は経費と認められますが、プライベートの食事で利用した食費は経費とは認められません。
また、自宅をオフィスにして働く場合、家賃や光熱費等の一部を経費として計上できます。
ただし、あまりにも経費を多く計上しすぎると、所得が低下してしまい社会的な信用が低下するため注意が必要です。
社会的信用が低下すると、クレジットカードが作成できなくなったり、賃貸物件の審査に通過できなくなったりするため、生活に支障が出る可能性があります。
控除を利用する
所得控除や税額控除などの控除制度を利用することでも、住民税の負担の軽減が可能です。
ここでは身近で利用しやすい、控除制度について順番に解説していきます。
ふるさと納税を利用する
ふるさと納税とは、特定の地方自治体に寄付をすることです。
ふるさと納税を利用すると「寄付金控除」が使えて所得税や住民税の負担が減るだけでなく、寄付をした地方自治体の名産品を受け取れる点が特徴。
寄付金控除は税額控除であるため、住民税の金額そのものの負担が軽減されます。
控除される金額は、寄付した金額から2000円を引いた額です。
例えば、30,000円のふるさと納税をした場合所得税と住民税から合わせて2万8000円が軽減されます。
青色申告特別控除を利用する
青色申告特別控除とは、青色申告を利用して確定申告をすることにより65万円が所得から控除される制度です。
青色申告特別控除を利用するには、以下の3つを行う必要があります。
- 税務署に青色申告承認申請書を提出する
- 複式簿記に則った帳簿付けが必要
- 確定申告時に損益計算書と貸借対照表を提出する
現在は優秀な会計ソフトが揃っていることもあり、帳簿付けや必要書類の作成はあまり難易度が高くありません。
積極的に利用していきましょう。
iDeCoに加入する
iDeCoは、個人型確定拠出年金のことで、自分の老後の年金を自分で積み立てて運用していく制度です。
iDeCoの掛け金は全額が所得控除の対象。
毎月2万円の掛け金を払っていると、課税所得から24万円が控除されます。
その場合、住民税の負担を24,000円減らすことが可能です。
掛け金の上限は、フリーランスの場合、毎月最大68,000円です。
ただし、小規模企業共済の掛け金と合算となるため注意しましょう。
減免・免除制度の利用は難しい
所得が著しく低い場合は、住民税の減免・免除の制度を利用が可能です。
利用できる条件は市区町村によって異なり、実施していない自治体もあります。
また、減免・免除の仕組みは本来、生活保護を受けている方や障害者、無職の方向けの制度のため、利用条件である所得の額が低く設定されているケースがほとんど。
フリーランスになるために会社を退職したというだけでは、利用するのが難しいかもしれません。
ただし、フリーランスとして働き売上が思うように伸びなかず、住民税の支払いが難しい場合は、諦めずにお住いの市町村役場の担当窓口に相談してみるとよいでしょう。
自治体によっては、減免・免除の条件に当てはまる可能性があります。
さらに、条件に当てはまらなくても、分割払いを認めてくれる可能性もあるのです。
まとめ
住民税は自分で計算する必要はありませんが、仕組みを理解し計算できるようになっておくことが望ましいでしょう。
住民税の納税額をあらかじめ把握しておき、事前にお金を確保しておくことで、事業経営に大きな支障が出ずに済みます。
基本的には所得税と同じ方法で節税が可能なため、所得税の勉強と合わせて住民税の理解も深めていってくださいね。