「フリーランスになると手取りっていくらくらいになるんだろう?」
「会社員のときと比べてどれくらい違うんだろう」
このような疑問をお持ちの方のために今回は、フリーランスになった時の手取りの計算方法について細かく解説していきます。
この記事を読んでいただくことで、フリーランスの手取りの計算方法がわかるようになり「気づいたらお金が無くなっていた」という事態も回避できるでしょう。
ぜひご一読ください。
目次
フリーランスの手取りと会社員の手取りの違い
フリーランスと会社員では、収入から手取り額を計算する方法や手取りの考え方が、少し異なります。
具体的には、以下の3点です。
- 源泉徴収の有無
- 経費の有無
- 社会保険料の金額
まずはフリーランスと会社員の手取りの違いについて、確認していきましょう。
源泉徴収の有無
会社員は、所得税を給与やボーナスから天引きする形で源泉徴収されています。
そのため、給与の総額から源泉徴収も含めて天引きされた残りの金額が手取りです。
一方でフリーランスの場合は、確定申告において自分で所得税の金額を計算し納めなければなりません。
そのため、税金を支払い終えた後に残った金額が手取りとなります。
経費の有無
フリーランスは、事業に貢献した費用を経費として計上できます。
計上する経費の金額が大きいと、課税の対象となる所得の金額を少なくでき、所得税や住民税の負担の軽減が可能です。
ただし、経費の分だけ手取りが下がります。
一方で会社員は、基本的には経費を利用できません。
そのため、会社員は経費によって手取りが下がることはありませんが、手取り収入の中からスーツ代や靴代などの必要な物品を購入する必要があります。
社会保険料の金額
フリーランスと会社員では、以下のように加入する健康保険や年金の種類が異なり負担する社会保険料の金額も異なるため、手取りの金額に差が出ます。
年金 | 健康保険 | |
フリーランス | 国民年金 | 国民年金健康保険 |
会社員 | 厚生年金 | 健康保険(被用者保険) |
また、会社員は厚生年金や健康保険の保険料を勤務先と折半していますが、フリーランスは保険料を全額自己負担しなければなりません。
フリーランスで手取りを計算する方法
フリーランスで手取りを計算する方法は、以下の通りです。
- 「収入(売上)−経費−社会保険料−税金」
それぞれの項目について、確認していきましょう。
経費
フリーランスとして収入を得るためには、様々な道具や設備が必要です。
このような、道具や設備を取得するための費用も自分の収入から払わないといけません。
そこで、売上を上げるために必要だった出費を経費として計上することで、経費分の金額については所得税や住民税が発生しなくなります。
経費として認められるためには、事業の売上に貢献していなければなりません。
例えば、交通費の場合、クライアントとの打ち合わせや取材などで利用した交通費は経費と認められます。
しかし、プライベートでただ電車に乗っただけでは経費として認められません。
また、経費を多く計上することで、所得の金額が少なくなり、社会的な信用が下がる恐れがあります。
クレジットカードや賃貸物件などの審査に通過しづらくなるなど、日常生活に悪影響が出る恐れがあるため注意しましょう。
社会保険料
フリーランスの社会保険料とは、先程お伝えした国民年金保険料と国民健康保険の合計金額です。
それぞれについて、詳しく解説していきます
国民年金保険料
国民年金保険料は定額なため、売上や年収によって変わることはありません。
2019年4月時点の国民年金保険料額は、20歳以上の方1人につき16,410円です。
また国民年金には、扶養の概念がないため、20歳以上の配偶者や扶養家族がいる場合も保険料負担が発生します。
国民健康保険料
国民健康保険は、国民年金とは異なって、所得の金額によって保険料の額も上下する仕組みです。
「医療分保険料」「支援分保険料」「介護分保険料」の3つ(自治体によって名称が異なる)に分かれており、世帯ごとに合算して算出。
また、それぞれの保険料において「所得割」「均等割」「平均割」に分かれており、お住まいの地方自治体によって料率や金額が異なります。
ちなみに、所得割は以下の方法で計算されます。
- 所得割=(売上−経費−基礎控除)×所得割率
※基礎控除の額は33万円
そして、国民年金と同様に扶養の概念がないため家族全員の保険料を支払わなければなりません。
また、介護保険領分の支払いの対象となるのは、会社員が支払う介護保険料と同様で、基本的に40歳以上65歳未満の方です。
税金
フリーランスの手取りの金額を知るためには以下の4種類の税金額を計算する必要があります。
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
上記のうち、1〜3の税金は、以下の計算式で求められる「課税所得」に、所定の税率をかけて計算します。
- 課税所得=収入(売上) −経費 − 青色所得特別控除 − 所得控除
上記のうち青色申告特別控除とは、以下を満たすことで受けられる65万円が控除される制度です。
- 所定の期日までに青色申告承認申請書を税務署に提出
- 複帳簿記での帳簿付け
- 確定申告時に「損益計算書」と「貸借対照表」を提出
また、所得控除とは所定の条件を満たした人が所得から差し引くことができる金額のことです。
所得控除には、以下のようなものがあります。
条件 | 控除額 | |
基礎控除 | 全員に適用される所得控除 | 所得税:38万円住民税:33万円 |
配偶者控除 | 一定の収入以下の配偶者がいる場合 | 所得税:最大38万円住民税:最大33万円 |
扶養控除 | 所定の条件を満たす扶養家族がいる場合 | 所得税:最大38万円住民税:最大33万円 |
社会保険料控除 | 国民年金や国民健康保険などの社会保険料を支払った場合 | 国民年金や国民健康保険で支払った保険料と同額 |
それでは、各税金の計算方法について詳しく見ていきましょう。
所得税
所得税とは、年間の所得に対して課税される税金です。
フリーランスの場合は所得税の金額を自分で計算し納税する「確定申告」の手続きをしなければなりません。
所得税の計算方法は、以下のように課税所得の金額に応じた税率がかけられて算出される仕組みです。
- 「所得税=課税所得×税率−税額控除」
税額控除とは、所得税の税額を直接減らしてくれる控除のこと。
住宅ローンを組んでいる場合に利用できる「住宅ローン控除」や、ふるさと納税をした際に利用できる「寄附金控除」などがあります。
住民税
住民税は、市町村民税と都道府県民税に分かれており、それぞれについても所得割と均等割に分かれています。
自治体によって詳細は異なりますが、概ね以下の通りです。
市町村民税 | 都道府県民税 | 合計 | |
所得割 | 6% | 4% | 10% |
均等割 | 3,500円 | 2,100円 | 5,600円 |
所得割は、次の計算式が表すとおり、所得税と同じく年間の所得によって税額が変わる仕組みです。
- 「所得割=課税所得×税率」
そして、最終的な住民税の計算方法は以下の通りです。
- 「住民税=所得割+均等割−税額控除」
税額控除には、所得税と同じく住宅ローン控除や寄付金控除の他に、住民税独自の調整控除があり、最低でも2,500円が税額から差し引かれます。
個人事業税
個人事業税は、所得に課せられる税金で、以下の計算式で求められます。
- 個人事業税=(収入−経費 − 専従者給与等 − 各種控除)× 税率
専従者給与等とは、配偶者を従業員として雇用している場合に支払っている給与です。
また、各種控除には以下の2種類があります。
- 事業主控除:一律で290万円が控除
- 繰越控除:損失などが生じて発生した赤字を次年度に繰り越した場合の控除
そして税率は、開業届に記載した職業によって異なります。
詳細はこちらのページの「4 法定業種と税率」をご確認ください。
また、webライターや漫画家などの文筆業は事業税がかかりません。
消費税
消費税とは。売上が1,000万円以上のフリーランスが収めなければいけない税金のことです。
消費税は、普段の買い物に上乗せして既に支払っているイメージがありますよね。
しかし消費税は、本来お店や企業が国民から預かり、まとめて国に納めるという仕組み。
フリーランスになってサービスを提供すると、取引先から預かった消費税を国に納める立場になるのです。
フリーランスの手取り金額をシミュレーション
ここでは実際に、以下のモデルケースを使って試算をしてみたいと思います。
- 年齢:30歳
- 住所:東京都葛飾区
- 職業:デザイン業
- 売上:800万円
- 経費:200万円
- 青色申告特別控除:利用なし
- 家族構成:配偶者(29歳、年収100万円)
上記の条件で、試算をしていきましょう。
国民健康保険料
まず、所得割の対象となる所得の計算をします。
葛飾区について国民健康保険は以下の通りです。
医療分 | 支援分 | 介護分 | |
所得割率 | 7.25% | 2.24% | 1.85% |
均等割額 | 39,900円 | 12,300円 | 15,600円 |
※葛飾区には平均割がないため省略
まず、世帯主の保険料を計算してみましょう。
所得割額を計算すると以下のようになります。
- 医療分:800万円−200万円−33万円(基礎控除)×7.25%=411,075円
- 支援分:800万円−200万円−33万円(基礎控除)×2.24%=138,240円
- 合計:411,075円+138,240円=549,315円
年齢が40歳以下のため、介護分の保険料はかかりません。
同様に均等割額は、年間52,200円(39,900円+12,300円)となります。
よって、世帯主の年間保険料の合計額は
- 549,315円+52,200円=601,515円
です。
また、配偶者分の国民年金保険料も、均等割の分だけ保険料が発生するため、年間で52,200円。
合計すると、世帯で年間653,715円(601,515円+52,200円)の保険料が発生します。
国民年金
国民年金保険は家族2名分ですので、393,840円(16,410円×2名×12ヶ月)となります。
所得税
所得税を算出するためには、課税の対象となる所得を算出する必要があります。
計算に必要な所得控除の額は以下の通りです。
- 基礎控除:38万円
- 社会保険料控除:1,047,555円(653,715円+393,840円)
- 配偶者控除:38万円
- 所得控除合計:1,807,555円
そして、課税所得の金額は以下のように計算できます。
- 課税所得=収入(売上) −経費− (青色所得特別控除)−所得控除
=800万円−200万円−1,807,555円
=4,192,445円
こちらの国税庁のサイトを参照すると、課税所得が330万円超〜695万円以下の場合の所得税は以下の通り。
- 所得税=課税所得×20%−427,500円
=410,989円
以上で所得税の金額が計算できました。
住民税
住民税の場合も所得税と同様に、所得控除の金額をもとに課税所得の金額を算出します。
所得控除の金額は以下の通りです。
- 基礎控除:33万円
- 社会保険料控除:1,047,555円(653,715円+393,840円)
- 配偶者控除:33万円
- 所得控除合計:1,707,555円
- 課税所得=収入(売上) −経費− (青色所得特別控除)−所得控除
=800万円−200万円−1,707,555円
=4,092,445円
住民税の税率は10%、葛飾区の均等割は5,000円です。
調整控除を最低の2,500円とした場合、住民税額は以下の通りです。
- 住民税=4,092,445円×10%+5,000円−2,500円
=411,744円
この値が住民税です。
個人事業税
個人事業税は以下の通りです。
- 個人事業税=(収入−経費 − 専従者給与等 − 各種控除)× 税率
=(800万円−200万円−290万円)×5%
=155,000円
以上で個人事業税も計算できました。
消費税
モデルケースの場合、売上が1,000万円以下のため消費税は課税されません。
最終的な手取り額
最終的な手取り額を計算すると以下の通りになります。
- 手取り額=収入−経費−社会保険料−税金
=800万円−200万円−1,047,555円−410,989円−411,744円−155,000円
=3,974,712円
毎月にすると、およそ33.1万円の手取り額です。
ちなみに、青色申告特別控除を利用していた場合、手取り額は4,169,712円(毎月約34.7万円)までアップします。
フリーランスになる場合は、できる限り青色申告を利用した方が手取りの金額を大きく増やすことが可能です。
まとめ
今回は、フリーランスの手取りの計算方法について解説しました。
税金や社会保険の計算は少々複雑に感じるかもしれません。
しかし、慣れてしまえば簡単ですし、会計ソフトを利用すれば試算や計算も手軽に行えます。
フリーランスになってから資金繰りや日々の生活に困らないためにも、手取りの計算を早めにマスターしてみてくださいね。