「フリーランスになるとたくさん税金の支払いが発生しそう」
「税金の支払いが怖くてフリーランスになるのが怖い」
このようなに感じて、会社員からフリーランスになることに二の足を踏んでいませんか?
そこで今回は、フリーランスになったときの税金対策について解説します。
フリーランスになる前に、税金の知識を身につけてあらかじめ対策を考えておくと、事業に集中できるだけでなく、節税効果によって資金繰りが楽になります。
ぜひご一読ください。
目次
フリーランスが対策すべき税金は所得税
税金の中で最も対策しやすいのは所得税です。
所得税の計算方法は理解しやすく、簡単に対策できることも多いので、まず所得税から対策をしていきましょう。
ここでは、所得税の計算方法や仕組みを解説します。
所得税は年間の所得にかかる税金
所得税は1年間での所得に課税される税金のことです。
所得とは、1年間の収入から必要な経費を引いた残りの金額。
収入の全てに税金がかかるわけではありません。
所得税の計算方法
所得税を計算するにはまず課税所得を求めなければなりません。
課税所得は以下の計算式で求められます。
課税所得=売上−経費−所得控除
上記の計算式のうち、売上から経費を引いた額を「総所得」といいます。
また、所得控除とは個人の事情や状況に応じて、総所得から差し引くことができる金額のことです。
そして、所得控除の額に応じた税率をかけて所得税を計算します。
所得税=課税所得×税率−控除
つまり、所得税の金額を下げるには、課税所得の額を下げること。
さらにいえば、経費や所得控除の額を大きくすればよいのです。
所得税を対策すると住民税の額も減る
所得税の金額が低くなるように対策をすると住民税の金額も低くできます。
住民税は、課税所得に10%の税率をかけて計算します。
所得税と同じように課税所得の金額を下げると住民税の金額も下がるのです。
ただし、所得控除の額が所得税を計算するときの額と1部異なるため、課税所得の金額が所得税と全く同じになるわけではありません。
フリーランスの税金対策は2種類
フリーランスが所得税の税金対策をするときは、以下の2種類を心がけましょう。
- 控除を利用する
- 経費で落とす
それぞれについて、具体的に解説していきます
控除を利用する
控除には所得控除と税額控除があります。
所得控除とは、先程の計算式でも確認いただいた通り課税される所得課税所得を減額してくれる性質があります。
所得控除には多くの種類があり、1つでも多く所得控除を受けることが大切です。
税額控除は、所得税の金額を直接減額してくれる控除のことで、所得控除に比べて種類が少なくなります。
しかし、節税効果は所得控除と比べてとても大きいので、積極的に利用していきましょう。
経費で落とす
支出を事業の経費にする方法も有効です。
総所得は、売上から経費を引いて計算しますよね。
経費の額が多いと総所得の金額も低下するため、所得税の節税に繋がります。
所得控除と税額控除にはどんな種類がある?
控除には先ほどご紹介した所得控除以外にも、所得税や住民税の金額を直接減額してくれる税額控除があります。
フリーランスの税金対策には、所得控除と税額控除の活用が不可欠です。
そこで、所得控除と税額控除のそれぞれの種類と特徴について解説していきます。
自分にとって、どの控除が使えそうか確認してみましょう。
所得控除の種類
所得控除は課税所得の金額を減らすため、算出された税金自体を減額する税額控除に比べると節税効果が劣ります。
しかし、所得控除の種類は税額控除に比べてとても多く、利用しやすいのが最大のメリットです。
数ある所得控除の中でも、特に身近で利用しやすいものを選んで紹介していきます。
基礎控除
基礎控除は、フリーランスや会社員などの職業を問わず、収入を得ている全ての人に適用される所得控除です。
総所得から控除される金額は、所得税と住民税を計算する場合で、それぞれ以下のように異なります。
- 所得税:38万円
- 住民税:33万円
基礎控除以外にも、配偶者控除や生命保険料控除など、算出する税金によって控除額が異なる所得控除がいくつかあるため注意しましょう。
社会保険料控除
社会保険料控除では、国民健康保険や国民年金など社会保険料で支払っている保険料と同じ額が控除されます。
「社会保険料は必要なものだからその分の税金は払わなくて良いよ!」
という意味合いから社会保険料控除は存在します。
社会保険料控除には、所得税と住民税による控除額の違いはありません。
配偶者控除
一定の収入以下の配偶者がいる場合に、受けられる所得控除です。
配偶者の職業がパートやアルバイトで給与収入を得ている場合は、年収が103万円以下でなければなりません。
また、控除される額は、基礎控除と同じ額で、所得税と住民税による違いも同一です。
- 所得税:38万円
- 住民税:33万円
ちなみに、配偶者の収入が103万円を超えた場合は、配偶者特別控除という別の所得控除が受けられます。
配偶者所得控除の控除額は、配偶者の年収によって決まり、年収が増えるにつれて控除額も減っていく仕組みです。
扶養者控除
扶養者控除とは、配偶者以外で16歳以上の6親等内の血族及び3親等内の親族がいる場合に受けられる所得控除です。
控除額は、年齢によって以下のように決まっています。
区分 | その年の12月31日時点の年齢 | 控除額 |
一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上 | 38万円 |
特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 |
老人扶養親族 | 70歳以上 | 58万円(同居していない場合は48万円) |
同居していない老人親族には、老人ホームへ入居している人も含まれます。
生命保険料控除
生命保険や医療保険などに加入している場合に受けられる所得控除です。
所得から控除される額は、年間で支払った保険料の額に応じて決まります。
生命保険料控除は、一般、介護医療、個人年金の3つの分野に分かれており、対象の保険は以下の通りです。
- 一般:死亡や生存で保険金を受け取れる生命保険や養老保険、学資保険など
- 介護医療:医療保険やがん保険、介護保険など
- 個人年金:特定の条件を満たした個人年金保険
控除額は所得税の場合、1分野につき最大4万円で、年間の保険料が8万円を超えた場合に適用されます。
3分野合計で最大12万円の控除です。
住民税の場合は、1分野につき最大2.8万円が控除されます。(年間保険料が5.6万円を超えた場合)
3分野の合計控除額は最大で7万円です。
1分野の控除額2.8万円を3倍した、8.4万円より少ないため注意しましょう。
小規模企業共済掛金等控除
小規模企業共済等掛金控除は、小規模企業共済や個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入していた場合に、年間で支払った掛け金と同じ額が所得から控除されます。
小規模企業共済は、退職金がない自営業やフリーランスのために、退職金を積み立てる制度。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、老後の年金を自分で積み立てていく制度です。
自分の努力で、老後の資金をしっかり準備している人は、税金が優遇されるといえます。
青色申告特別控除
青色申告特別控除は、確定申告時に青色申告を利用すると、所得から最大65万円が控除されます。
青色申告とは、日々の売上を複式簿記で帳簿付けをし、確定申告時に「貸借対照表」と「損益計算書」を提出する申告のことです。
青色申告をすることで、所得税の金額がより正しく計算されます。
青色申告特別控除は、所得税を正しく計算しようとする人の税金を優遇してくれる仕組みです。
税額控除の種類
次に、税額控除の種類を確認していきましょう。
税額控除は、算出された所得税や住民税の金額を直接減額してくれるため、大きな節税効果があります。
ただし、所得控除よりも種類が少なく、活用できるものも少ないです。
その中で、比較的利用条件が緩く、おすすめの税額控除を紹介していきます!
寄付金控除
寄附金控除は、ふるさと納税で支払った金額から2,000円を引いた額が、所得税と住民税から控除される仕組みです。
たとえば、ある自治体に50,000円のふるさと納税をした場合、所得税と住民税から合計48,000円が控除されます。
また、ふるさと納税をおこなうと、納税した自治体の名産品(肉や米など)を受け取れる点も魅力的です。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んで住宅を購入した場合に、ローン残高の1%の金額を最大10年間、所得税と住民税から控除できます。
3,000万円の住宅ローンを組み、年末時点での残高が2,900万円だった場合、29万円が所得税から控除されます。
所得税の金額が住宅ローンの控除額を下回った場合は、残りの控除額のうち一定額までは住民税から控除される仕組みです。
控除を使ったおすすめの税金対策
ここまで、所得控除や税額控除の種類や条件、控除額をお伝えしてきました。
そこでこの章では、所得控除や税額控除の中でも利用しやすいものを紹介していきます。
iDeCoや小規模企業共済に加入する
iDeCoや小規模企業共済に加入すると、将来の資産構築をしながら所得税や住民税を節税できるためおすすめです。
加えて、iDeCoや小規模企業共済での加入で受けられる小規模企業共済掛金控除は、配偶者控除や扶養控除に比べて、自分の意思で利用できる所得控除です。
さらに、掛け金の全額が所得控除されるため、生命保険料控除よりも高い節税効果を得られます。
ふるさと納税をする
ふるさと納税は、所得税や住民税の額を直接減らしてくれるだけでなく、実質2,000円で魅力的な返礼品も受け取れる点がおすすめです。
納税先の自治体に制限がなく、返礼品を基準にふるさと納税する自治体を選んでも問題ありません。
ただし、ふるさと納税を受けるためには、納税先の自治体から送られてくる「寄付金受領証明書」を確定申告時に提出する必要があります。
受領書が送られてきたら、無くさないように大切に保管してくださいね。
開業届を出して青色申告特別控除を利用する
青色申告特別控除の所得控除額は最大で65万円ですので、とても大きな節税効果を得られます。
青色申告に必要な、複式簿記の帳簿付けや、貸借対照表と損益計算書の作成も、会計ソフトを使えば簡単に作成可能です。
簿記の知識もほとんど必要ありません。
青色申告の申請方法も、開業届と青色申告承認承認申請書を税務署に提出するだけ。
手間もさほどかからず、簡単に申請でき、高い節税効果を得られるためおすすめです。
経費で落とせるのはどこまで?範囲と注意点を解説
最後に、経費を利用して節税する際の注意点を確認しましょう。
経費は、なんでも落とせるわけではなく、ルールが存在します。
また、経費を利用しすぎることによるデメリットも存在するため、注意しましょう。
経費でおとせるのは事業を営むうえで必要な費用
経費と認められるポイントは、「売上に貢献しているかどうか」です。
経費で落としものはすべて、どのように売上に貢献しているのかを説明できなければなりません。
たとえば、飲食費を交際費として経費処理した場合は、いつ誰とどんな内容であったかを明確に説明できるようにしておきましょう。
経費で落とした備品で減価償却が必要な場合
10万円以上の消耗品や備品を購入した場合、費用の全額がその年の経費になりません。
数年間に分けて購入した金額を経費処理する「減価償却」という方法で処理します。
18万円のパソコンを購入した場合で考えてみましょう。
10万円以上20万円未満のパソコンは、購入した年も含めて3年間にわたって、金額を均等に償却します。
18万円を購入したとしから3年間、6万円ずつ「減価償却費」として計上する決まりです。
ただし、青色申告を利用して確定申告する場合は、30万円まで減価償却で経費処理する必要がなくなります。
経費で落としすぎると信用が低下する
経費の額を大きくしすぎると、総所得が低下してしまい、社会的な信用も低下するため注意が必要です。
社会的信用が低下すると、以下のような影響がでます。
- クレジットカードが作りにくくなる
- 家を借りることができなくなる
- ローンが組めなくなる
総所得が低下すると、「お金を払ってくれないかもしれない」と思われることからこのような社会的な信用が低下します。
節税ばかりに気を取られて、社会的な信用まで低下してしまわないように注意しましょう。
まとめ
フリーランスになる前に、税金対策の方法を知っておくと、資金繰りに苦労する確率が低下します。
とくに、フリーランスになって初めの頃は、仕事や営業に追われて税金について学ぶ時間を確保できないかもしれません。
控除の種類や経費の注意点を理解したうえで、税金対策をしてくださいね!