「フリーランスになると扶養はどうなるのだろう」
「そもそも扶養ってどんな仕組みなんだろう」
このように扶養について悩んでいらっしゃいませんか?
フリーランスになると会社員と待遇が変わってしまうので、心配になりますよね。
そこで今回は、フリーランスになると家族の扶養がどのようになるのか解説していきます。
この記事を読んでいただくことで、扶養の仕組みもわかるようになるため、ぜひご一読ください。
目次
フリーランスが家族の扶養を気にすべき理由
会社員として働いており、家族を扶養に入れている場合は、フリーランスになると扶養から外れてしまう部分があるため要注意です。
扶養から外れてしまうと、家族の分の保険料などの負担が増えて、生活が苦しくなってしまう可能性があります。
そのため、扶養の種類や扶養から外れる条件などを、フリーランスになる前にしっかりと確認しておくことが重要です。
扶養の種類は2種類ある
扶養といっても、実は2種類あるのをご存知でしょうか。
具体的には以下の2種類です。
- 社会保険の扶養
- 税金の扶養
それぞれの扶養の意味合いや条件がことなるので、確認していきましょう。
社会保険の扶養
社会保険には、「公的医療保険」と「公的年金」の2種類があります。
会社員とフリーランスでは、加入する公的医療保険や公的年金の種類が以下の表のように異なるのです。
◯公的医療保険
会社員 | フリーランス | |
種類 | 健康保険(被用者健康保険) | 国民健康保険 |
加入手続き先 | 勤務先 | 各市町村役場の国民健康保険担当窓口 |
保険料負担 | 会社と折半 | 全額自己負担 |
◯公的年金
会社員 | フリーランス | |
公的年金の種類 | 厚生年金 | 国民年金 |
加入手続き先 | 勤務先 | 各市町村役場の国民年金担当窓口 |
保険料負担 | 勤務先と折半 | 全額自己負担 |
受給できる年金 | 基礎年金+厚生年金 | 基礎年金のみ |
それでは、会社員とフリーランスでは扶養の扱いはどのように変わるのでしょうか?
具体的に確認していきましょう。
公的医療保険
公的医療保険は、病気やケガで病院などの医療機関で診察や入院、手術の医療行為を受けた場合に、自己負担する金額を下げてくれる制度。
公的医療保険に加入すると、健康保険証が発行されて、医療費の自己負担3割になるなど、さまざまな保障を受けとることが可能です。
会社員の場合、勤務先の健康保険組合の健康保険に加入します。
フリーランスが加入する健康保険は、基本的には各市町村が運営している国民健康保険です。
このうち、フリーランスが加入する国民健康保険には、扶養の仕組みがないので、加入する人数分の保険料が必要になります。
一方で会社員の加入する健康保険は、配偶者や子供を扶養に入れられるため保険料は必要ありません。
ただし、家族を扶養に入れるには、その家族の年収が130万円未満である必要があります。
公的年金
公的年金とは、老後に受け取れる「老齢年金」や亡くなった場合に残された家族が受け取れる「遺族年金」などがある制度です。
20歳以上の人は、何かしらに公的年金に加入しなければなりません。
フリーランスは、お住まいの市町村役場で国民年金に加入する必要があります。
そして国民年金には、扶養の仕組みがありません。
20歳以上の配偶者がいる場合は、本人と配偶者それぞれの保険料を支払う必要があります。
会社員は、勤務先で厚生年金に加入し、配偶者を扶養に入れることが可能です。
扶養に入れた場合、配偶者は国民年金の第3号被保険者となり、国民年金に加入することになります。
しかし、配偶者の年収が130万円以上の場合は、厚生年金の扶養に入れることができません。
ちなみに、国民年金の保険料は2019年4月時点で1名につき16,410円です。
厚生年金の保険料は、加入する人の給与の額によって変わります。
税金の扶養
配偶者や家族が税金上の扶養から外れると、特定の所得控除が受けられなくなります。
その結果、所得税や住民税などの税金の負担が上昇するので注意が必要です。
それでは、扶養が関係する所得控除について、確認していきましょう。
配偶者控除
配偶者控除は、世帯主に所得が38万円以下の配偶者がいる場合、所得から最大で38万円が控除される制度です。
また、配偶者控除の控除額は、世帯主の所得(年収)によって以下の表のように変わる仕組みです。
世帯主の所得(年収) | 配偶者控除額 |
900万円以下(1,120万円以下) | 38万円 |
950万円以下(1,170万円以下) | 26万円 |
1,000万円以下(1,220万円以下) | 13万円 |
1,000万円超(1,220万円超) | 0万円 |
世帯主の年収が高いほど、配偶者控除の控除額は少なくなっていき、所得が1,000万円(年収1,220万円)を超えると、配偶者控除の額も0円になります。
配偶者特別控除
配偶者特別控除は、配偶者の所得が38万円超123万円以下の場合に、1万円〜38万円の所得控除が受けられます。
所得から控除される額は、配偶者の年収だけでなく、世帯主の年収によって変わり、配偶者や世帯主の年収が多いほど、控除額が少なくなる仕組みです。
扶養控除
扶養控除とは、16歳以上の親族がいる場合に受けられる控除です。
控除の額は以下のように、親族の年齢によって変わります。
区分 | その年の12月31日時点の年齢 | 控除額 |
一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上 | 38万円 |
特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 |
老人扶養親族 | 70歳以上 | 58万円(同居していない場合は48万円) |
ただし、扶養控除が受けられる条件は、親族の年間の所得が38万円以下の場合です。
フリーランスになると家族が社会保険の扶養から外れる
フリーランスになると、公的医療保険や公的年金の扶養から配偶者や家族が外れてしまいます。
一方で税金の扶養の判断基準は、世帯主の職業に関わらず、配偶者や家族の所得の額です。
このため、会社員からフリーランスへと世帯主の職業が変わることで、影響がでる扶養は社会保険の扶養となります。
国民健康保険と国民年金にはそもそも扶養がない
フリーランスが加入する国民健康保険や国民年金には、そもそも扶養の仕組みがありません。
そのため、配偶者や家族の所得に関係なく、加入する人すべての保険料が必要となります。
一方で、扶養の仕組みがある健康保険や厚生年金は基本的に会社員しか加入できません。
公的医療保険で配偶者を扶養に入れる方法「任意継続」
しかし、フリーランスも社会保険の扶養を利用する方法があります。
それは、退職した勤務先の健康保険を、フリーランスになってからも継続する「任意継続」の制度を利用する方法です。
任意継続をすると、会社を退職しても会社の健康保険に、最大で2年加入できます。
そして、年収が130万円以下の配偶者がいる場合は、扶養に入れることが可能です。
ただし公的年金については、厚生年金を継続することはできず、国民年金に移行して配偶者の分の保険料を支払う必要があるため注意しましょう。
保険料の支払いが難しい場合は免除制度を利用しよう
もし、国民健康保険や国民年金の保険料の支払いが難しい場合は、国民健康保険料の軽減や減免、国民年金保険料の免除や猶予などの申請を必ず行いましょう。
軽減や免除などの申請が承認されると、保険料の一部もしくは全部の支払いをしなくても良くなります。
そして、引き続き健康保険証を利用でき、年金を受け取る権利も消滅しません。
仮に、軽減や免除の手続きをせずに保険料が未納の状態になると、制度の利用ができなくなるどころか、財産を差し押さえられる可能性もあります。
とくに家族がいる方は、自分や家族を守るためにも、軽減や免除の申請はきちんと行いましょう。
フリーランスの家族が税金の扶養から外れてしまうケース
フリーランスになっただけでは、家族が税金上の扶養から外れてしまうことはありません。
しかし、世帯主がフリーランスになったことで、配偶者や家族が働く量を増やした結果、収入や所得が上がってしまった場合は、税金上の扶養からも外れる可能性があります。
ここでは、家族が税金上の扶養から外れてしまう条件について確認していきましょう。
配偶者の年収が一定額以上ある場合
配偶者の年収が一定額以上あると、配偶者控除および配偶者特別控除が利用できなくなる可能性がありますため、注意しましょう。
税金の扶養を抜けてしまう所得や収入の金額は、配偶者がどのような形で収入や所得を得ているかによって変わります。
配偶者に給与収入がある場合
配偶者が給与収入のみの場合、配偶者控除と配偶者特別控除が利用できなくなる条件は、以下の通りです。
- 配偶者控除:給与収入が103万円を超えた場合
- 配偶者特別控除:給与収入が201万円を超えた場合
つまり、配偶者の年収が201万円を超えない限りは、税金の扶養から外れません。
しかし、配偶者控除や配偶者特別控除は、配偶者は世帯主の年収によって、控除額が変わる仕組みです。
最大の控除額である38万円を控除してもらうためには、配偶者の年収を150万円以下にして、世帯主の年収も1,120万円以下である必要があります。
配偶者がフリーランスの場合
配偶者がフリーランスの場合は、収入(売上)から経費を引いた所得の金額に注目しなければなりません。
配偶者控除と配偶者特別控除が受けられなくなる条件は、以下の通りです。
- 配偶者控除:所得が38万円を超えた場合
- 配偶者特別控除:所得が123万円を超えた場合
このように、配偶者の所得が123万円を超えないと税金の扶養からは外れません。
そして、最大の控除額である38万円を控除してもらうためには、配偶者の所得が85万円以下、世帯主の所得が900万円以下である必要があります。
配偶者以外の家族の所得にも要注意
16歳以上の親族がおり、扶養控除を受けている場合は、その親族の所得が38万円を超えないようにする必要があります。(給与収入の場合は103万円)
とくに大学生の子供がいる場合は、アルバイトによって給与収入が103万円を超えると、扶養控除が受けられなくなるため注意が必要です。
まとめ
扶養には、社会保険の扶養と税金の扶養の2種類があります。
会社員からフリーランスになることによって、扶養から外れてしまうのは社会保険の扶養です。
しかし税金の扶養についても、配偶者や家族の所得が一定額を超えると、扶養から外れてしまうため注意が必要です。
とくにフリーランスになって収入が下がったことで、家族の働く量が増える場合には、収入をしっかり計算しましょう。
自分だけでなく、家族にどのような影響があるのかも考えたうえで、フリーランスを目指してみてくださいね。